漁業
当町の漁業は、町の中核産業であり、恵まれた漁場を利用して、ブリ、ヒラス、イサキ等の一本釣りを中心に、採貝藻、曳縄、延縄、刺網、シイラ漬等の漁船漁業が営まれています。
一方で、大切な水産資源を守り育てるため、アワビ等、漁業種類ごとに漁場や漁具、採捕サイズ等の各種自主規制や稚魚の放流、アワビの種苗生産、イカの人工産卵礁の設置、藻場の維持・回復への対策等、資源保全活動にも、従来から積極的に取り組んでいる地域でもあります。
また、漁協では、主要魚種のうち、以前から市場での評価が高い「イサキ」と「タチウオ」について、平成11年度から12年度にかけてブランド化に取り組み、イサキを「値賀咲」、タチウオを「白銀」とネーミングし、他産地との差別化を図り、魚価の高値安定にも努めてきました。
しかし、近年の漁業を取り巻く環境は大変厳しく、資源の減少、藻場の衰退、魚価の低迷、燃油価格の高騰、後継者不足、密漁や違反操業の横行等、多くの問題に直面しています。
このような状況の中、永く1町1漁協として運営されてきた小値賀町漁協は、経営基盤の強化を図るため、平成18年10月に隣島の佐世保市宇久町の宇久漁協と合併し、「宇久小値賀漁協」となりました。
今後も漁業経営は、ますます厳しくなることが懸念されますが、平成17年度に創設された離島漁業再生支援交付金を活用した各種漁業再生活動の展開など、関係者が一丸となって小値賀町漁業の活性化を目指しているところです。
主な海産物
イサキ、タチウオ、ブリ、ヒラス、マダイ、アオリイカ、ケンサキイカ、スルメイカ、サワラ、イセエビ、タコ、ハガツオ、シビ、アラ、ヒラメ、アカムツ
農業
当町の農業における環境は、地形がなだらかで河川の発達もなく、年間降雨量は県平均の約60%と極端に少ないです。そのため干ばつ時の被害により不安定な農業経営を強いられてきました。このような中、水源の適地として本島から3キロ離れ、高い山が存在し年間降雨量が多い野崎島に水源を求め、県営の野崎ダムが平成15年に完成しています。
農業品目については、肉用牛・水稲を基幹作目として、実エンドウ・メロンなどの施設・露地野菜や、ブロッコリーなどの土地利用型作目が産地化され、規模拡大が図られています。
土壌改良のための土づくりについては講演会、緑肥栽培の展示圃設置等を実施し、その結果について土づくり手引書を作成し農家全体の知識向上が図られ、また、平成9年に緊急畑地帯総合整備事業が完了した属島の大島地区において、土づくりに必要な牛糞堆肥がないため緑肥による土づくりを実践し成果をあげています。
堆肥施設については環境型農業への取り組み、牛糞処理問題を考えた場合に総合的な堆肥生産施設の建設が求められ、アンケート調査や耕畜農家等との議論を重ねた結果、畑総事業の中で建設いたしました。現在この堆肥生産施設において、良質有機堆肥が供給されております。
肉用牛については、遊休農地や里山の活用による放牧によって、飼養管理の省力化・低コスト化を図っておりますが、高齢化により飼育戸数が減少しており規模拡大による増頭対策が今後の課題です。
また、平成13年3月に設立された小値賀町担い手公社において農業の担い手確保育成の為の研修生の受入れや営農組織の育成・農地流動化による農地の斡旋・新規作物の実証展示及び普及・農産物の加工販売・農業に関する町内外への情報発信を行い、時代を担う後継者の育成及び農業生産基盤の充実を推進しており、平成20年度までに9名の修了生が小値賀で就農しております。
今後は、生産基盤整備がなされた施設を有効に利用、活用し規模拡大や省力化、園芸施設の導入、農業の近代化を推進し、若者に魅力ある産業としての確立に積極的に取り組んでいきます。
主な農産物
ミエンドウ、サヤエンドウ、落花生、コシヒカリ、ブロッコリー、トマト、ミニトマト、メロン、スイカ、ゴーヤ、サツマイモ、ゴーヤ、アスパラ
商業
当町の各産業が一体となった「じげもん振興協議会」を平成18年7月に設立し、地域の恵まれた地域資源と特徴を、町民の知恵と工夫により付加価値を見出し、新たな商品の開発に取組んでいます。
また、物産展等の時に、地元特産品販売やセット販売による相乗効果を図り、平成21年4月より始めた当町の特産品をインターネットを活用した通販事業による、販路開拓や販売促進に努め地域産業の活性化を目指しています。
観光業
当町の観光は、恵まれた自然を活かした体験と、農業・漁業等を舞台とした交流を通しての活性化を図る「体験型ツーリズム」をキーワードに事業を展開しています。海を活用した観光は「ブルーツーリズム」、農業を活用した観光は「グリーンツーリズム」、自然体験は「エコツーリズム」と称されていますが、当町ではこの全てが体験できる、島暮らし体験型観光「アイランドツーリズム」として推進しています。
事業の推進のため観光窓口を一本化し、行政や住民が参画した「NPO法人おぢかアイランドツーリズム協会」が、島全体のツーリズム事業を実践する組織として平成19年に誕生しました。このNPO法人が行う各種体験事業と地元町民との交流の民泊事業は、自然に溢れ・人情味豊かで・おもてなしの島としてメディアなどに注目され、オーライ!ニッポングランプリ(内閣総理大臣賞)をはじめ、JTB交流文化大賞、グリーンツーリズム大賞、エコツーリズム大賞特別賞を受賞するなど、地域活性化の切り札となっています。
また、本島の東に位置する野崎島は、自然を満喫できる癒しの島として、廃校となった校舎を改修した宿泊施設「野崎島自然学塾村」を中心に手付かずの大自然が人気を呼ぶとともに、世界遺産暫定リスト入りした「旧野首教会」のたたずまいが魅力を集め、1年を通して多くの観光客が訪れるようになりました。
新たな取り組みとして、第一次産業と連携し、大人層をターゲットとした滞在型の島暮らし体験交流事業へ移行するための「古民家再生事業」を平成21年度から進めています。その核となる捕鯨や酒造業で栄えた旧藤松邸は、江戸時代に建設された貴重な古民家で、「地産地消古民家レストラン」として整備されます。あわせて町内に点在する10軒程度の古民家を中長期滞在交流型施設として整備することで、観光による交流人口拡大と地域基幹産業と連動した経済活性化並びに雇用の創出を柱とした地域再生として期待されます。
このような観光まちづくり事業は、島で癒しを求める国内外の新しい観光客の誘致が可能となり、現在実施しているアメリカ高校生親善大使PTPや国内の修学旅行に加え、新規の交流人口の拡大につなげる計画です。
今後更に取り組みを拡大することで、農林・水産・商工業などの町経済への波及増大を図り、互いに連携のとれた観光産業の推進を目指していきます。
保健・医療
当町などの、高齢化率が高い小規模外海型離島において医療に対する住民の期待は、益々大きくなっています。
そのような中、当町では、全ての町民が健康でいきいきとした明るい生活が送れるよう「健康おぢか21」計画を住民主体で策定しています。
今後、目標達成に向けて、外部の専門医師や関係機関と連携を図ることで地域の限られた社会資源の不足を補いながら、小さな島の住民の顔が見える長所を活かした福祉・保健・医療連携を住民参加により進めてまいります。
福祉
小値賀町では、高齢化率が42%を超え、高齢化に対する福祉はますます重要になっている中で、高齢者が住み慣れた地域で、いつまでも安心した生活が送れるよう、行政と地区住民・福祉事業者・その他関係団体が連携し、地域ぐるみで高齢者を支える共助のしくみづくりに努めています。
その施策については、地域福祉センター・特別養護老人ホーム・認知症高齢者グループホーム・高齢者福祉センター等の社会福祉施設の整備を進めるとともに、小規模自治体でしか成し得ない、顔の見えるきめ細やかな住民福祉サービスの充実を図ります。
また、平成22年2月から、町内で初めての社会福祉法人「値賀の里」が設立され、特別養護老人ホーム養寿園・グループホーム暖家を運営しています。
教育
町内の小学校、中学校、高等学校においては、少子化・過疎化の影響で、年々児童生徒数が減少し、学校教育そのものの存続が危惧されるなか、平成20年度の小値賀地区小中高一貫教育の本格実施を受けて、それぞれの学校が有する限られた教員数を垣根を越えた有機的な活用で、従来にも増した教育水準の向上を図り、多様な進路希望を持つ子ども達の一人ひとりの夢の実現が図れる教育環境を、12年間の一貫した流れの中で構築しようと取組んでいます。
さらに、学校と地域が一体となって取り組むことで、小値賀独自の特色ある教育環境の中で、郷土おぢかを愛し、心豊かな「小値賀っ子」を育てることへとつながります。
防災
本町の災害において、特に被害の拡大が予想されるのは、五島列島の西側を通過する台風で、平坦な地形の本町では、人家や諸施設が沿岸の平地に集まっており、過去においても高潮や、暴風雨、津波などで甚大な被害をもたらしています。
また、集落では、人家が集中しており、万一火災等が発生した場合、大火になる恐れがあります。
このような中、町では定期的な消防訓練の実施をはじめ、「小値賀町地域防災計画」を策定し、いかなる災害にも対処できるような体制を整えています。
交通
現在、小値賀町と本土を結ぶ定期交通手段は船便のみで、佐世保市とのルートは、九州商船1社によるフェリーが1日2往復、高速船が2往復です。福岡県博多とのルートは野母商船1社によるフェリー1往復で、また、隣島の佐世保市宇久町へは、市営交通船が1日4便運航しています。
町内の各離島には町営交通船が運航しており、①柳~納島(5便)、②笛吹~大島(4便)、③笛吹~六島・野崎(2便)となってます。
町内路線運行においては、第三セクターの小値賀交通株式会社によって路線バスが運行されています。
空路は、以前、福岡空港・長崎空港行の定期航空路線がありましたが、運営会社が撤退し、2006年3月末で定期路線は全廃。現在は、チャーター機の利用や急患ヘリの発着及び自衛隊の完熟訓練の利用となっています。